第 1 話
『ナイアスの朝』
〜運河沿いの水車の家から〜
【ダフネの日記】
ナイアスの朝は、いつも天井から降り注ぐ光のカーテンではじまる。
窓を開けると、ミル・ハウスの大きな木製水車が「カラカラ、ゴトゴト」と規則正しい音を立てて回っていた。その飛沫が朝日に反射して、エメラルドグリーンの運河をキラキラと染めていく。
お気に入りのカヌーにパドルを乗せて、私はいつもの街巡りへと漕ぎ出した。
「ピクシス、今日もいいお天気だね」
私の肩の上に飛び乗ったピクシスは、翡翠色の目を細めて小さく鳴いた。だけど、その視線はいつものように、街の景色ではなく、ずーっと高い天井の水面をじっと見つめている。ピクシス、あなたにはあの上から、一体どんな音が聴こえているの?